うちは住宅街にある小さなパン屋だ。
決して大きな店じゃないが、朝から近所の人が買いに来てくれる、そんな普通の店。
ただ、ここ最近ずっと悩まされている問題があった。
無断駐車。
店の前にはお客さん用の駐車スペースがある。パンを買いに来る人のための場所だ。
ところがある日から、見慣れない車が当たり前のように停まるようになった。
最初は「近所の人かな」と思った。
でも違う。
その車、一度も店に入ってこない。
ただ駐車場だけ使って、どこかへ消える。
そして気づけば——何度も同じ車が停まっている。
そのせいで常連のお客さんが困り始めた。
「停めるところないですね…」
本来なら停められる場所なのに、知らない車が何時間も占領している。
さすがに腹が立った。
でもいきなり怒鳴るのも違う。
そこで私は紙にこう書いて、ワイパーに挟んでおいた。
「ここはお客様用駐車場です。無断駐車はご遠慮ください」
普通ならこれで終わる。
そう思っていた。
だが翌日——
店に来て私は目を疑った。
また同じ車が停まっている。
そして昨日の紙は、
ぐしゃぐしゃに丸めて地面に捨てられていた。
その瞬間、完全にキレた。
「……ああ、そういう態度ね」
つまりこいつは、
注意を見た↓捨てた↓また停めた
完全にナメている。
私は紙を一枚取り出し、今度ははっきりこう書いた。
そして車の窓にガムテープで貼った。
そこにはこう書いてある。
「ここはお前のところではない!何回目じゃ? お前はアホか。どうする? 前回、間違わない対策を出してきたけど効果ないやん。
バイト社員には何やってるんかわからん。本人と責任者で考えろ。土下座しに来い。許さんぞ。」
正直、かなり怒っていた。
だがそれだけ迷惑をかけられていた。
そしてその日は店を開けた。
昼過ぎ——
例の車の持ち主らしい男が戻ってきた。
窓の貼り紙を見た瞬間、
顔が真っ赤になった。
「ちょっと!!これあなたがやったんですか!?」
私は外に出た。
「ええ、やりましたよ」
男は怒鳴った。
「こんな貼り紙していいと思ってるんですか!?」
私は冷静に言った。
「ここ、うちの駐車場です」
男は言った。
「ちょっと停めただけでしょう!」
私は地面を指した。
昨日の紙がまだ落ちている。
「それ、あなたが捨てたんですよね?」
男は黙った。
でもすぐに開き直った。
「こんなの営業妨害ですよ!」
その言葉を聞いた瞬間、
私は決めた。
今日は逃がさない。
男が車を動かそうとした瞬間——
「ガチャン」
タイヤロックをかけた。
男は叫んだ。
「何してるんですか!?」
私は言った。
「無断駐車対策です」
男はスマホを取り出した。
「警察呼びますからね!」
私は即答した。
「どうぞ」
30分後。
本当に警察が来た。
警察官が事情を聞く。
男は大声で言った。
「車をロックされたんです!」
警察官は私を見る。
私は静かに言った。
「無断駐車、何回目です」
そして地面の紙を見せた。
警察官は男に聞いた。
「ここ、お店の駐車場ですよ?」
男は小さく言った。
「……はい」
警察官はため息をついた。
「注意されてるのに繰り返すのはまずいですね」
男の顔が一気に青くなる。
そして警察官は私に言った。
「ロック外してあげてもらえますか」
私は男を見た。
「謝るなら外します」
周りには客もいる。
警察もいる。
男はしばらく黙っていたが、
ついに頭を下げた。
「……すみませんでした」
私はロックを外した。
男は何も言わず車に乗り、
そのまま逃げるように去った。
それから——
あの車は二度と来ていない。
結局こういう人間は、
優しく言っても聞かない。
注意しても無視する。
でも、
恥をかく瞬間だけ急に大人しくなる。
本当はこんなことしたくない。
でも、
ルールを守らない人には、それなりの返しが必要な時もある。