今日、私は机に座りながら手が震えていた。
幼稚園から届いた書類を見てから、ずっと心臓がドキドキしている。
「退園届」
その文字がページの上で冷たく光っていた。
ああ、ついに来たんだ。
この時期に、我が子が突然、幼稚園から放り出されるなんて……。
正直、怒りより先に、体が震えた。
落ち度があるのは確かに我が子だ。
でも、だからと言って、このタイミングでの退園通告は酷すぎる。
2月12日、最初の通知が来た時、まだ少し希望を持っていた。
「きっと話せば解決できる」
そんな淡い期待が、心の片隅に残っていた。
でも、時間が経つごとに、その希望は粉々に崩れていった。
明日が提出期限だという事実が、私の胸を締め付ける。
何も準備できないまま、子どもを受け入れてくれる場所を探さなければならない。
考えるだけで胃が痛い。
思わず背もたれに寄りかかるが、緊張で肩はガチガチだ。
手の中の書類が汗で少ししっとりしている。
私は子どもを見る。
無邪気に遊ぶ姿が、余計に胸を締めつける。
「ごめんね……」
声にならない声を心でつぶやく。
子どもはまだ、何が起こっているのか理解していない。
この小さな胸に、どれだけの不安を与えることになるのだろう。
幼稚園側の言い分も理解できる。
規律を守らなかったことは事実だ。
でも、それをこの時期に、しかも書類一枚で決められるなんて……。
中学3年生が2月に内定取り消しに遭うくらい、対策の取りようがない事態だ。
私は何度も、ペンを握った手を離した。
どうしたらいいのか、全く見えない。
周りに相談しても、うまく説明できる自信がない。
親しい友達には、「仕方ない」と言われるだけだろう。
社会のルールとしては正しいのかもしれない。
でも、母親として、私は納得できない。
頭の中で無数のシナリオが渦巻く。
退園届を受け入れるべきか、まだ幼稚園に掛け合うべきか。
でも、掛け合ったところで、子どもはすぐに戻れないかもしれない。
それを考えるだけで、また涙がこみ上げてくる。
夜、子どもと一緒に寝る前、私はふと気付いた。
このまま泣いていても、何も変わらない。
必要なのは、冷静に次の一歩を考えることだ。
まず、提出期限までに必要な書類を整え、控えを残す。
万が一、後で何かあっても、記録として使えるように。
それだけは、絶対に抜かりなく。
そのために、私は深呼吸をした。
震える手を何度も握り直し、紙を机に置く。
目の前には子どもが無邪気に遊ぶ姿。
これを守るためなら、何でもできる。
怒りも焦りも、まだ胸に渦巻いている。
でも、それをただ放置しては、何も解決しない。
私は行動する。
書類の控えをコピーし、幼稚園に確認の電話を入れる。
電話の向こうで職員の声が淡々と流れる。
それでも私は、一つずつ、質問を投げる。
子どもの今後の受け入れ先、必要な手続き、期限の詳細。
少しずつ、だが状況が見えてくる。
怒りと焦りで真っ白だった頭に、ほんのわずかだが光が差し込む。
行動を起こすことで、目の前の壁は完全には消えなくても、少しだけ柔らかくなる。
明日、提出する書類を手に握る。
手が震えるが、それはもう恐怖だけではない。
私は戦う準備ができた。
子どもの未来を守るために、私が今できることを、できる限りやる。
書類を机に置き、子どもを抱き上げる。
「大丈夫、母さんがついてる」
心の中で何度も繰り返す。
怒りと恐怖の波を、少しずつ整理していく。
何もせずに諦めるのではなく、行動することで、少しだけ安心感を取り戻す。
今日という日を、私は記録として残す。
涙も焦りも、全部ここに書き留める。
明日、書類を提出した後、少しでも光が見えればいい。
そして、子どもが笑顔を取り戻せる場所が、必ず見つかると信じている。
これが、私の現実。
そして、私の戦いの始まりだった。