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「態度が悪いからどかない」と新幹線の指定席に座った男が言った。私が席を主張すると、周りまで「席くらいで騒ぐなよ」と責め始めた。――そして私は、電子チケットを男の目の前に突きつけた。
2026/04/06

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「私の指定席に座っていた男が、“態度が悪いからどかない”と言った。」

発車まで、あと47秒だった。

青い新幹線の座席の前で、私は立ち尽くしていた。

目の前には、私の指定席。
そしてそこに、まるで最初から自分の席であるかのように座っている知らない男。

私は一度、深呼吸してから声をかけた。

「すみません、そこ…私の指定席なんですが。」

男はゆっくり顔を上げた。
そして、私を見て言った。

「その言い方、感じ悪いね。」

一拍おいて、こう続けた。

「だから、今はどかない。」

一瞬、言葉の意味が理解できなかった。

「…え?」

「態度ってあるだろ。人にお願いする態度。」

男はそう言って、座席にさらに深く背中を沈めた。

通路の真ん中で、私は立ったまま。
後ろには乗客が次々と乗り込んできて、流れが止まり始める。

すると、後ろの方から声が飛んだ。

「ちょっと、通路塞がないでよ。」

振り返ると、事情を知らない乗客がこちらを見ている。

男はその空気を察したのか、急に声を大きくした。

「ほら見ろよ。通路塞いでるじゃないか。」

そして、わざとらしく肩をすくめて言った。

「公共の場なんだからさ、そんな怒った顔で騒ぐなよ。」

その言い方は、まるで私が問題を起こしている人間みたいだった。

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すると、横から別の声が聞こえた。

「席くらいで騒ぐなよ。」

私は一瞬、言葉を失った。

事情を知らない人たちが、私を見ている。
まるで、私がトラブルを起こしているかのように。

男は、ニヤッと笑った。

その顔を見て、私は静かにスマホを取り出した。

そして、画面をそのまま男の目の前に向けた。

電子チケット。

座席番号がはっきり表示されている。

今、男が座っているその席の番号と、完全に一致している。

男の視線が一瞬止まった。

けれど、次の瞬間、肩をすくめて言った。

「だから?」

「そんなことで得意?」

その言い方に、車内の空気が少しだけざわついた。

私はスマホを下ろし、座席の横にあるボタンを押した。

車掌呼び出しボタン。

数十秒後。

車掌が通路を歩いてきた。

「どうされましたか?」

私は落ち着いて言った。

「この席、私の指定席なんですが。」

そして、もう一度スマホを見せた。

車掌はチケットを確認し、男を見た。

「こちらの席は、このお客様が予約されています。」

男は、少しだけ眉を動かした。

しかし、すぐに言い返した。

「いや、ちょっと座ってただけだよ。」

「そんな大げさにしなくてもいいだろ。」

その瞬間、車掌の声が少しだけ硬くなった。

「指定席の占有は迷惑行為になります。」

車内の空気が一瞬で静かになった。

さっきまで私を見ていた乗客たちが、黙った。

男は舌打ちをして、ゆっくり立ち上がった。

私はそのまま席に座った。

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青い座席のクッションが、やっと背中に触れる。

ふと横を見ると、足元には私のバッグ。
そして、ペットボトルのほうじ茶。

さっきまで手に持っていたのに、置いたままだった。

発車ベルが鳴った。

ドアが閉まる。

列車がゆっくり動き始めた。

――これで終わり。

そう思った。

だが、次の瞬間。

男は、私の横の通路に立ったままだった。

腕を組み、見下ろすように言った。

「そんなことで得意になってんの?」

私は顔を上げた。

男は続けた。

「態度が悪いんだよ、あんた。」

さっきまで周りに聞こえるように言っていた声が、今度は少し低くなっていた。

私はゆっくり口を開いた。

「まだ通路塞ぐなら、通報します。」

声は大きくなかった。

でも、通路にいた車掌には聞こえた。

車掌はすぐ振り返った。

そして男に言った。

「お客様。」

「これ以上通路を塞ぐ行為はおやめください。」

一拍置いて、こう続けた。

「続く場合は、対応を取らせていただきます。」

男の顔色が変わった。

さっきまでの余裕は、もうなかった。

数秒の沈黙。

そして男は、何も言わずに通路の奥へ歩いていった。

車内は、急に静かになった。

さっき「席くらいで騒ぐなよ」と言っていた人も、誰も何も言わない。

私は背もたれに体を預けた。

窓の外の景色が、ゆっくり流れていく。

さっきまでの騒ぎが、嘘みたいだった。

青い座席の横で、ほうじ茶のボトルが小さく揺れていた。

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